境界を越える者、秘められた可能性(読者投稿論文:境界の彼方―越境者ダイノボットの流浪―草稿)

はい、年末最後と思われます、読者投稿記事です。
今回もTOROさんが論文形式で投稿してくださいました。
今回の題材はビーストウォーズ。
みんな大好きな
今回も、筆者はグリフ女史。
ですが、今回はこの論文の草稿を書きあげた後、彼女にも危機が迫りつつあるようです・・・・・・
では、前回の反応も高かったTOROさんの論文シリーズ、さっそく読んでいきましょう・w・ノ
境界の彼方―越境者ダイノボットの流浪―草稿
はじめに
機械惑星セイバートロン。
燦々と輝く金属の月が滑らかな大地を照らす母なる世界。
異星の種族は、その身体的特徴から“トランスフォーマー(TF)”と呼ぶ、我々種族が住まう(もしくは起源の)天体である。
我々の種族は、悠久の昔にクインテッサ星人の隷属を振り払い、繁栄を遂げて来た。
しかし、その繁栄も900万ステラサイクル前に始まった内戦により、陰りが見え始めた。
その戦火は瞬く間に母星全土を呑み込み、最終的に大戦争「グレートウォー」と称される程に銀河各地に拡大し、一時は故郷そのものも崩壊させてしまった。
そして、近年においても、僭称者「メガトロン」とヴィーコン軍団の母星制圧により、種そのものが絶滅の危機に瀕した。
その中で種族を救おうと母星に残った者、母星から旅立った者、そしてその陰で暗躍した者と、様々な勢力が蠢いていた。
これらの出来事は、サイバトロン・デストロンの区別、すなわち我々の種族に打ち込まれた軛を、まざまざと具現化したものと言える。
この区別が現在にも至るまでの争いの源になったのは、言うまでもない。
問題になるのは、「マクシマル・アップグレード」施行後に誕生した新世代にも、「サイバトロン(マクシマル)」・「デストロン(プレダコン)」の区別が、何故存在するのかである。
この区別は、現在でもなお、宇宙各地に散発的に発生する紛争の一因になっている。
この世代における区別の起源については、現在私グリフの力量では手に余るため、問うことは出来ない。
しかし、将来この問題の検証する上での一段階として、本論では、「サイバトロン(マクシマル)」・「デストロン(プレダコン)」の差異について、両勢力に所属した戦士である、ダイノボットから検証を行いたい。

(デストロン特殊戦闘員 ダイノボット。
画像元は、セイバートロン星の監視カメラデータより。)
******************
第1節 ビーストウォーズの位置付け
ダイノボットについて検証を行う前に、本節では、彼が参戦した「ビーストウォーズ」の概略と位置付けについて検討を行いたい。
大戦争「グレートウォー」が終結し、数100ステラサイクルが経過したセイバートロンより、「メガトロン」と名乗るテロリストと彼の配下達は、至宝ゴールデンディスクを盗み出した。
「メガトロン」一味を追跡した「コンボイ」率いる探査部隊が不時着した太古の地球は、セイバートロン時の姿では生存も困難である程、エネルゴンの力に満ちていた。
両軍はこの難を最小限に抑えるため、地球の原生生物の姿に擬態した。ここに猛獣大戦「ビーストウォーズ」と呼ばれる所以がある。

(サイバトロン軍探査船「アクサロン号」の艦長コンボイと、セイバートロン星指名手配のテロリスト集団首領メガトロン。
この画像データはどちらもビーストウォーズ戦役の時のものである)
この戦役は、本来ならば局地戦の一つに過ぎなかったが、戦場となった太古の地球、並びにこの戦役に敗れた「メガトロン」による母星制圧により、最高議会は関連資料の閲覧に対して、全面禁止と言っても良い程に制限を加えているが、限られた資料や聞き取り調査から、次の状況が浮かび上がって来る。
「コンボイ」指揮化の探査船アクサロンに搭載されていたプロトフォームは、地球に不時着する際、被害を最小限に抑えるべく、「コンボイ」はプロトフォームが搭載された救命ポッドを衛星軌道上に放出した。
その後、地球に不時着したプロトフォームの一部は「メガトロン」に奪われ、彼の配下となった。
「パーツはサイバトロンだが心はデストロン」と「コンボイ」に罵倒され、その謀略と格闘能力で恐れられたブラックウィドーも、その1人である。
同様の経緯で、デストロンに加わったプロトフォームには、彼女以外に数名確認される。
ブラックウィドーはコンボイ麾下の騎士シルバーボルト(彼もデストロンに加わったプロトフォームの1人であった)により救われ、サイバトロンに戻って来た。
しかし、残りはデストロンとして散って行った。先のブラックウィドーに対する「コンボイ」の評価は、サイバトロン・デストロンの区別が、極めて無価値で曖昧模糊であることを逆説的に示している。
「ビーストウォーズ」戦役では、この逆転現象をプログラムの書き換えが原因としているが、それは単なるキッカケに過ぎず、プログラム書き換えを可能とする幾つかの要因を考える必要がある。
その要因の1つには、身体構造の同一性が挙げられる。
未だ謎の多い「マクシマル・アップグレード」施行以後、サイバトロンは「マトリクス」、デストロンは「ピット」と呼ばれる未確認の場所にて、プロトフォームが製造されているとの噂がある。
これらの施設の存在が事実としても、両者の身体構造は基本同じである。
そして、次に挙げられるのは救命ポッドの問題である。
このポッドは、乗組員の長期休養と輸送施設の環境維持、そして遭難時の生命維持を目的として作られた装置である。
ポッド自体は内部の乗組員の保護を最優先するために、非常に堅牢に造られているが、多機能であるが故に、強い衝撃を加えられると、内部システムのエラーが生じやすいと言われている。
言うなれば、身体構造の同一性故に、救命ポッドの故障を中心とする、不測の事態が発生した場合に、サイバトロン・デストロンの区別は曖昧となり、その間隙を突かれ、プログラム改変が行われる。
母星セイバートロンのように、表面上は秩序が維持され、平穏な日常を送ることが可能な環境下であれば、サイバトロン・デストロンの区別は意識に上らず、例え意識したとしても大きな問題になることは少ない。
しかし、この区別は一度大きな混乱があれば、すぐに表面化し、紛争の火種となる危ういものである。
「ビーストウォーズ」(そしてその後に続く「メガトロン」の母星制圧)は、サイバトロン・デストロンの区別の曖昧さを、改めて先鋭化した事例として、注目すべきである。

(猛獣戦争「ビーストウォーズ戦役」
両者はサイバトロン・デストロンの陣営の名を旗頭に、地上で戦い続けた)
******************
第2節 ダイノボットの懊悩と遍歴
前節では、「サイバトロン(マクシマル)」・「デストロン(プレダコン)」の区別と、その曖昧さを先鋭化させた事例として、「ビーストウォーズ」を位置付けた。
そして、その中でもプロトフォームのプログラムにより、サイバトロンからデストロンとして目覚めた者達について言及した。
本節では、プログラムの書き換えもなく、デストロンからサイバトロンに移った戦士、ダイノボットの遍歴と最期から、両勢力の差異とは何かを検証して行く。
グレートウォー終戦直前、デストロンの敗戦が確実となった時期、サイバトロンによるデストロンの残党狩りは激しさを増し、苛烈を極めたと言われる。
そして、デスザラスの敗退やレイザークローの暗殺等、デストロンの崩壊は如実に迫っていた。ダイノボットの出生については多くのデストロンと同様に、深い霧に包まれている。
しかし、戦史に造詣が深かったと言われる彼は、デストロンの栄光と敗北の歴史と共に、サイバトロンへの敵愾心が生じたことは想像に難くない。
そして、栄光に輝く軍事帝国の再建のため、「メガトロン」と共に犯罪大君クライオテックの私的工作員となった。
その後、ゴールデンディスクと新型戦艦ダークサイド(テラクラッシャーとも称される)を強奪し、太古の地球に不時着したが、「メガトロン」と方針の違いから彼と袂を分かち、サイバトロンに加わった。
では、彼はどのような人物であったのか。筆者(グリフ)は、「ビーストウォーズ」戦役にて活躍した工作員ラットル氏と接触し、ダイノボットについて聞き取りを行った。以下、その一部を掲載する。

(現、ルポライターのラットル氏。
ビーストウォーズ・ビーストマシーンズ生還後、彼は過去のサイバトロンフォームの姿に戻している)
******************
『ダイノボットぉぉ?あの「ダァダァ恐竜」について何を聞きたいの?あんたも物好きだね。
学者先生の考えることは分からないよ。
まぁ、遠くからわざわざ来てくれたんだし、話せることは話すよ。
あのシマシマ恐竜には、何度か食われかけたよ。
けど、このラットル様の強さにはカナワナカッタよ。
えっ?あいつの性格について?そりゃ短気で粗野、お上品なオイラと比べたら野蛮極まりなかったね。
もう、「歩くデストロン」そのものだよ。
コンボイは奴のことを買ってはいたが、他の仲間達は閉口気味だったよ。
チー坊、横から口出すなよ、うるさいなぁ・・・・。
ああ、ゴメンゴメン。
しかし、信義には厚い奴だったよ。
一度約束したことは最後まで守り通した。
誇り高いというべきかな。
あとは・・・・・「勝利」について拘っていた。
何に対して勝とうとしていたかは、もう謎だね。
オールスパークにでも行かない限りは難しいよ。
あいつには一度マジで殺されかけたけど、それは「勝利」への執着が原因だったのかもなぁ。
「ダァダァ恐竜」はメガトロンからゴールデンディスクを奪い返した後、再びデストロンに戻ろうとしたんだ。
その時に、ディスクとオイラの首が危うく手土産になるとこだったんだ。
しかし、あいつはオイラを殺すことをためらって、助けてくれた。
あの時、「勝利」への執着を捨て去ったのかもしれない。
元々、一人のデストロンとして、サイバトロンに加わったようなもんだ。
ブラックウィドーも似た様なものだけど、彼女は元々はサイバトロンだっ・・・・・、ちょっと蜘蛛姐ちゃん、何で割り込もうとしてるんだよ!!白馬の騎士の救出劇を語るのは、後にして!!!
でも、あの時に、もしかしたらサイバトロンになったのかもしれない。
そして、地球に住むおサルさん達を守って、死んでしまった。
・
・
・
・
・
・
散々文句を言ったけど、オイラ、あいつと一緒に戦えて本当に良かったと思ってるよ・・・・・』
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ラットル氏の証言から総合すると、ダイノボットの性格は頗る好戦的であり、他のサイバトロン戦士とは距離を置いていた。
しかし、一度約束したことには違わない義理深さを持ち、本人は気付いていなかったが、弱者のへの憐れみも持ち合わせていた。
しかし、「勝利」への強い執着から、一度は奪取したゴールデンディスクと共にメガトロンの下に帰参しようとした。
そして、原生生物の祖先を守り散っていた。
ダイノボットの性格は、非常に複雑に見える。
彼の行動規範は、どうやら「サイバトロン」「デストロン」という枠では捉えられない柔軟さ、または「執念」に基づいている。
それが「勝利」への飽くなき追求によるものとは、ラットル氏の卓見であろう。
では、彼は何に対して「勝利」を求めていたのか。
同氏は私に、アクサロン号から回収した、ダイノボットの「コアダンプ」のバックアップを貸与してくれた。
その中に、彼の「遺言」とも言うべき肉声が、収められていたので、ここに掲載したい。

(ビーストウォーズ時代の特殊戦闘員ダイノボット。
アクサロン号画像データバンクより)
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『ダァァ・・・・。
以上で俺の知っているメガトロンの計画は全て記録した。
後は俺自身がやるべきことを果たすまでだ。成るや成らざらんや・・・・。
「こんな言葉を吐く暇があんなら行動に移せ」、「サイバトロンから勝利を奪う作戦を立てろ」、「臆病者が」、こんな言葉を口にした奴は、以前なら様々な侮蔑の言葉を並べ立てただろう。
しかし、期せずしてメガトロンから反逆し、サイバトロンに寝返り、そしてまたメガトロンの下に戻ろうとした。
サイバトロンの奴らは・・・コンボイは口に出すことはないが、他の奴らは俺への不信感を露わにしている。だが、俺はそれだけのことをした。
俺は何をしたかったのか。
サイバトロン帝政に対する不満は、無論あった。
デストロンの築き上げた遺産の上に君臨し、「勝者」のツラをした奴らは、敵だ。
しかし何よりも、デストロンという「敗者」に生まれた「運命」に抗いたかった。
今のデストロンはサイバトロンに頭を押さえ付けられた、俎板の上のシーコン達と同様だ。
トドメも刺されず、「融和と協調」を謳う奴等によって生殺しにされる。
偽善と不正に満ちた「勝者」の支配する世界共々、「敗者」のデストロンを然るべく葬り、シリコンバルハラの英霊の列に加えさせたかった。
ギガトロンと名乗る男は、「忌まわしき永遠から種族を解き放つ」と言っていたが、そんなモノには興味がない。
しかし、メガトロンならば「デストロンの呪われた運命を解き放つ」かもしれないと思い、俺は奴に協力した。
しかし、奴も違った。
メガトロンは全て呑み尽くすまで止まることはない。
俺は矢尽き刃折れようとも、メガトロンの狂気を止めなくてはならない・・・・。』
******************
ダイノボットの「遺言」によれば、現サイバトロン(オートボット・マクシマル連合)政権は、デストロン帝政を礎として宇宙に覇を唱えた、「盗人猛々しい」存在であり、敵にトドメを刺さないでいる、傲慢偽善の存在に映っていた。
そして、彼から言わせれば、「生殺し」にされているデストロンは、過去の強大な帝国の残滓に過ぎず、生かされた屍、サイバトロンの勝利を飾るトロフィーにしか見えなかった。
彼は何に勝利したかったのか。
欺瞞と屈辱への勝利である。
しかし、その戦いは究極的には勝者はいない。
デストロンの急進派であるデストロンガー総帥ギガトロンの「忌まわしき永遠から種族を解き放つ」という誘いにも乗らなかったダイノボットは、虚無感と怒りに苛まれていたと考えられる。
そして、クライオテックのプランに基づく「メガトロン」の歴史改変計画に彼は賛同し、ゴールデンディスクを盗み出した。
だが、「メガトロン」と結果的に決裂し袂を分かった。
恐らくは、闘いをゲームと認識し、部下達も単なる手駒と見なしていた彼と、「闘いは栄光への道」と考えていたダイノボットとの、見解の相違によるものと思われる。
ダイノボットは、闘いの旅路の果てに、真の誇りを見つけて散っていた。筆者はそう思う。
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おわりに
本論では、「マクシマル・アップグレード」施行後に誕生した新世代の差異、「サイバトロン(マクシマル)」・「デストロン(プレダコン)」について、「ビーストウォーズ」に参戦した、ダイノボットの遍歴から検証して来た。
太古の地球を舞台に始まり、セイバートロン由来の種自体を根本的に改変したこの戦いでは、サイバトロンのプロトフォームが、デストロン兵として目覚めることが散見された。
その要因としては、
(1)プロトフォームを保護する救命ポッドの脆弱性に付け込まれ、プログラムを改変された。
(2)プロトフォームの基本構造が、サイバトロン・デストロン共に相違がないことが挙げられる。
この事象は、基本的には外的要因により引き起こされたものだが、それを可能にしたのは(2)の内的要因であると考える。
このことは、サイバトロン・デストロンの区別が、極めて無意味なものと示す事例と言える。
しかし、本論で取り上げたダイノボットは、この事例には当てはまらず、自らの意思でデストロン・サイバトロンの両勢力を渡り歩いた。
彼をこのような行動に駆り立てたのは何であったのか。
闘いの中に生きた生粋の戦士ダイノボットは、グレートウォー終結後のデストロンが、過去の栄光の残滓に過ぎず、然るべく「弔い」をし、シリコンバルハラに葬送される「遺体」であったと考えていた。
しかし、サイバトロン現政権の融和策は、自らの勝利と栄光を記念するために、デストロンの「遺体」をトロフィーとして飾る屈辱極まる行為と、ダイノボットは見なしていた。
彼は「誇り高き死」と「勝利」という、一見すると背反する願望を抱いていた。
しかし、彼の勝利がデストロン帝政の「死」を、過去の栄光と共に葬り去ること、そのためのサイバトロンからの解放であるならば、両者は根本的に同じである。
彼は「メガトロン」の計画から離反し、サイバトロンに加わった後も、1人のデストロンとして振る舞っていた。
しかし、彼の立場は、常に両軍の「境界」に足場を置き、メガトロンの計画の推移を冷静に分析していた。
加えて、無意識の内に「サイバトロン」「デストロン」の境界の曖昧さを認識していたと思われる。
人類の祖先を守り孤軍奮戦した時、どちらの勢力としてではなく、セイバートロンの戦士として恩讐を乗り超えることが出来たと思われる。
「境界」の彼方にたどり着いたダイノボットは、永きに渡るグレートウォーを、真に終わらせる可能性を持った事例であると、筆者は思いたい。

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[「後日談」その壱 「グリフの手記」]
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私の研究室に、何者かが侵入した。
これで4回目である。
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ダイノボットの論文を報告した際、非難の声が巻き起こった。
出席していたロディマス氏の仲裁がなければ、危ない場面も見られた。
これには、学会内において「ビーストウォーズ」戦役の見解が、まだ定説が出来ていないためである。
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この戦役は、セイバートロンを根底から変えた大変動であった。
しかし、多くの研究者は「メガトロン」からの「セイバートロンの解放」のみに着目し、太古の地球で起きた戦いについては、ほとんど検証が行われていない。
最高議会は、地球での戦闘について厳しい閲覧指定を行っているが、これは再度の歴史改変を防止するという至極真っ当な理由と共に、不都合な事実の隠蔽を行うという目的も含まれていると思われる。
現在、「メガトロン」からセイバートロンを解放した、英雄「コンボイ」の列聖が重要な議題として上がっていると共に、神学者から、「サイバトロン」として選ばれるのは善のスパーク、「デストロン」には悪しきスパークという説が提出され、話題になっている。
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これらの事実は現政権を正当化し、将来の禍根を招くだけの妄言に過ぎない。
この論文は、現在の風潮に逆行するものであり、そのために研究室への侵入といった、嫌がらせが起きていると私は考えていた。
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現在、私は道を歩く度に何者かの追跡を感じる。
しかし、これらの出来事は単なる嫌がらせではない気がする
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[「後日談」その弐 「会話」]
セイバートロン星某所
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「グリフ女史の護衛、ご苦労だった。ラットル工作員。」
「過分のお言葉、光栄でございます・・・・と言うべきなんだろうけど、正直なところ気が引けるよ。
そもそも彼女が狙われたのは、ダイノボットのコアダンプをオイラが渡したせいだよ。
それもこれも、「お偉いさん」からの指令でね。」
「この手段が下策であることは、発案者である私が十分に理解している。
だが、現在水面下で暗躍を続けている勢力については、詳細は殆ど不明だが、偶然にも奴等がダイノボットの情報を欲していることが分かった。
それを君が持っていたのは、まさに僥倖だったよ。
君のことは優秀な教え子であったと、次官から話をうかがっていたからね。」
「バンブルのオッちゃんが、今じゃ情報局の次官とはねぇ。
しかし、このことは「極秘」と言っちゃいるけど、最高議会にはもう筒抜けじゃないの?」
「私は最高議会よりも、情報局長官に知られるのを恐れている。」
「なるほど。
そういえば、オイラ、地球であいつの元ペットをブッ飛ばして来たよ。」
「現在、長官とカセットロン部隊には、接触は見られない。
しかし、彼の「ペット」への愛情は有名だったからな。用心した方が良い。」
「ヤレヤレ、しばらくは面倒事から遠ざかると思ってたけど、オイラはそういう星の下に生まれたんだろうね。
無茶をするのはゴリラの大将だけだと思っていたけど、どうも「コンボイ」と名の付くお人は、みんなそういう性分らしいね。
グレートライオコンボイ閣下殿。」

はじめに
機械惑星セイバートロン。
燦々と輝く金属の月が滑らかな大地を照らす母なる世界。
異星の種族は、その身体的特徴から“トランスフォーマー(TF)”と呼ぶ、我々種族が住まう(もしくは起源の)天体である。
我々の種族は、悠久の昔にクインテッサ星人の隷属を振り払い、繁栄を遂げて来た。
しかし、その繁栄も900万ステラサイクル前に始まった内戦により、陰りが見え始めた。
その戦火は瞬く間に母星全土を呑み込み、最終的に大戦争「グレートウォー」と称される程に銀河各地に拡大し、一時は故郷そのものも崩壊させてしまった。
そして、近年においても、僭称者「メガトロン」とヴィーコン軍団の母星制圧により、種そのものが絶滅の危機に瀕した。
その中で種族を救おうと母星に残った者、母星から旅立った者、そしてその陰で暗躍した者と、様々な勢力が蠢いていた。
これらの出来事は、サイバトロン・デストロンの区別、すなわち我々の種族に打ち込まれた軛を、まざまざと具現化したものと言える。
この区別が現在にも至るまでの争いの源になったのは、言うまでもない。
問題になるのは、「マクシマル・アップグレード」施行後に誕生した新世代にも、「サイバトロン(マクシマル)」・「デストロン(プレダコン)」の区別が、何故存在するのかである。
この区別は、現在でもなお、宇宙各地に散発的に発生する紛争の一因になっている。
この世代における区別の起源については、現在私グリフの力量では手に余るため、問うことは出来ない。
しかし、将来この問題の検証する上での一段階として、本論では、「サイバトロン(マクシマル)」・「デストロン(プレダコン)」の差異について、両勢力に所属した戦士である、ダイノボットから検証を行いたい。

(デストロン特殊戦闘員 ダイノボット。
画像元は、セイバートロン星の監視カメラデータより。)
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第1節 ビーストウォーズの位置付け
ダイノボットについて検証を行う前に、本節では、彼が参戦した「ビーストウォーズ」の概略と位置付けについて検討を行いたい。
大戦争「グレートウォー」が終結し、数100ステラサイクルが経過したセイバートロンより、「メガトロン」と名乗るテロリストと彼の配下達は、至宝ゴールデンディスクを盗み出した。
「メガトロン」一味を追跡した「コンボイ」率いる探査部隊が不時着した太古の地球は、セイバートロン時の姿では生存も困難である程、エネルゴンの力に満ちていた。
両軍はこの難を最小限に抑えるため、地球の原生生物の姿に擬態した。ここに猛獣大戦「ビーストウォーズ」と呼ばれる所以がある。


(サイバトロン軍探査船「アクサロン号」の艦長コンボイと、セイバートロン星指名手配のテロリスト集団首領メガトロン。
この画像データはどちらもビーストウォーズ戦役の時のものである)
この戦役は、本来ならば局地戦の一つに過ぎなかったが、戦場となった太古の地球、並びにこの戦役に敗れた「メガトロン」による母星制圧により、最高議会は関連資料の閲覧に対して、全面禁止と言っても良い程に制限を加えているが、限られた資料や聞き取り調査から、次の状況が浮かび上がって来る。
「コンボイ」指揮化の探査船アクサロンに搭載されていたプロトフォームは、地球に不時着する際、被害を最小限に抑えるべく、「コンボイ」はプロトフォームが搭載された救命ポッドを衛星軌道上に放出した。
その後、地球に不時着したプロトフォームの一部は「メガトロン」に奪われ、彼の配下となった。
「パーツはサイバトロンだが心はデストロン」と「コンボイ」に罵倒され、その謀略と格闘能力で恐れられたブラックウィドーも、その1人である。
同様の経緯で、デストロンに加わったプロトフォームには、彼女以外に数名確認される。
ブラックウィドーはコンボイ麾下の騎士シルバーボルト(彼もデストロンに加わったプロトフォームの1人であった)により救われ、サイバトロンに戻って来た。
しかし、残りはデストロンとして散って行った。先のブラックウィドーに対する「コンボイ」の評価は、サイバトロン・デストロンの区別が、極めて無価値で曖昧模糊であることを逆説的に示している。
「ビーストウォーズ」戦役では、この逆転現象をプログラムの書き換えが原因としているが、それは単なるキッカケに過ぎず、プログラム書き換えを可能とする幾つかの要因を考える必要がある。
その要因の1つには、身体構造の同一性が挙げられる。
未だ謎の多い「マクシマル・アップグレード」施行以後、サイバトロンは「マトリクス」、デストロンは「ピット」と呼ばれる未確認の場所にて、プロトフォームが製造されているとの噂がある。
これらの施設の存在が事実としても、両者の身体構造は基本同じである。
そして、次に挙げられるのは救命ポッドの問題である。
このポッドは、乗組員の長期休養と輸送施設の環境維持、そして遭難時の生命維持を目的として作られた装置である。
ポッド自体は内部の乗組員の保護を最優先するために、非常に堅牢に造られているが、多機能であるが故に、強い衝撃を加えられると、内部システムのエラーが生じやすいと言われている。
言うなれば、身体構造の同一性故に、救命ポッドの故障を中心とする、不測の事態が発生した場合に、サイバトロン・デストロンの区別は曖昧となり、その間隙を突かれ、プログラム改変が行われる。
母星セイバートロンのように、表面上は秩序が維持され、平穏な日常を送ることが可能な環境下であれば、サイバトロン・デストロンの区別は意識に上らず、例え意識したとしても大きな問題になることは少ない。
しかし、この区別は一度大きな混乱があれば、すぐに表面化し、紛争の火種となる危ういものである。
「ビーストウォーズ」(そしてその後に続く「メガトロン」の母星制圧)は、サイバトロン・デストロンの区別の曖昧さを、改めて先鋭化した事例として、注目すべきである。

(猛獣戦争「ビーストウォーズ戦役」
両者はサイバトロン・デストロンの陣営の名を旗頭に、地上で戦い続けた)
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第2節 ダイノボットの懊悩と遍歴
前節では、「サイバトロン(マクシマル)」・「デストロン(プレダコン)」の区別と、その曖昧さを先鋭化させた事例として、「ビーストウォーズ」を位置付けた。
そして、その中でもプロトフォームのプログラムにより、サイバトロンからデストロンとして目覚めた者達について言及した。
本節では、プログラムの書き換えもなく、デストロンからサイバトロンに移った戦士、ダイノボットの遍歴と最期から、両勢力の差異とは何かを検証して行く。
グレートウォー終戦直前、デストロンの敗戦が確実となった時期、サイバトロンによるデストロンの残党狩りは激しさを増し、苛烈を極めたと言われる。
そして、デスザラスの敗退やレイザークローの暗殺等、デストロンの崩壊は如実に迫っていた。ダイノボットの出生については多くのデストロンと同様に、深い霧に包まれている。
しかし、戦史に造詣が深かったと言われる彼は、デストロンの栄光と敗北の歴史と共に、サイバトロンへの敵愾心が生じたことは想像に難くない。
そして、栄光に輝く軍事帝国の再建のため、「メガトロン」と共に犯罪大君クライオテックの私的工作員となった。
その後、ゴールデンディスクと新型戦艦ダークサイド(テラクラッシャーとも称される)を強奪し、太古の地球に不時着したが、「メガトロン」と方針の違いから彼と袂を分かち、サイバトロンに加わった。
では、彼はどのような人物であったのか。筆者(グリフ)は、「ビーストウォーズ」戦役にて活躍した工作員ラットル氏と接触し、ダイノボットについて聞き取りを行った。以下、その一部を掲載する。

(現、ルポライターのラットル氏。
ビーストウォーズ・ビーストマシーンズ生還後、彼は過去のサイバトロンフォームの姿に戻している)
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『ダイノボットぉぉ?あの「ダァダァ恐竜」について何を聞きたいの?あんたも物好きだね。
学者先生の考えることは分からないよ。
まぁ、遠くからわざわざ来てくれたんだし、話せることは話すよ。
あのシマシマ恐竜には、何度か食われかけたよ。
けど、このラットル様の強さにはカナワナカッタよ。
えっ?あいつの性格について?そりゃ短気で粗野、お上品なオイラと比べたら野蛮極まりなかったね。
もう、「歩くデストロン」そのものだよ。
コンボイは奴のことを買ってはいたが、他の仲間達は閉口気味だったよ。
チー坊、横から口出すなよ、うるさいなぁ・・・・。
ああ、ゴメンゴメン。
しかし、信義には厚い奴だったよ。
一度約束したことは最後まで守り通した。
誇り高いというべきかな。
あとは・・・・・「勝利」について拘っていた。
何に対して勝とうとしていたかは、もう謎だね。
オールスパークにでも行かない限りは難しいよ。
あいつには一度マジで殺されかけたけど、それは「勝利」への執着が原因だったのかもなぁ。
「ダァダァ恐竜」はメガトロンからゴールデンディスクを奪い返した後、再びデストロンに戻ろうとしたんだ。
その時に、ディスクとオイラの首が危うく手土産になるとこだったんだ。
しかし、あいつはオイラを殺すことをためらって、助けてくれた。
あの時、「勝利」への執着を捨て去ったのかもしれない。
元々、一人のデストロンとして、サイバトロンに加わったようなもんだ。
ブラックウィドーも似た様なものだけど、彼女は元々はサイバトロンだっ・・・・・、ちょっと蜘蛛姐ちゃん、何で割り込もうとしてるんだよ!!白馬の騎士の救出劇を語るのは、後にして!!!
でも、あの時に、もしかしたらサイバトロンになったのかもしれない。
そして、地球に住むおサルさん達を守って、死んでしまった。
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散々文句を言ったけど、オイラ、あいつと一緒に戦えて本当に良かったと思ってるよ・・・・・』
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ラットル氏の証言から総合すると、ダイノボットの性格は頗る好戦的であり、他のサイバトロン戦士とは距離を置いていた。
しかし、一度約束したことには違わない義理深さを持ち、本人は気付いていなかったが、弱者のへの憐れみも持ち合わせていた。
しかし、「勝利」への強い執着から、一度は奪取したゴールデンディスクと共にメガトロンの下に帰参しようとした。
そして、原生生物の祖先を守り散っていた。
ダイノボットの性格は、非常に複雑に見える。
彼の行動規範は、どうやら「サイバトロン」「デストロン」という枠では捉えられない柔軟さ、または「執念」に基づいている。
それが「勝利」への飽くなき追求によるものとは、ラットル氏の卓見であろう。
では、彼は何に対して「勝利」を求めていたのか。
同氏は私に、アクサロン号から回収した、ダイノボットの「コアダンプ」のバックアップを貸与してくれた。
その中に、彼の「遺言」とも言うべき肉声が、収められていたので、ここに掲載したい。

(ビーストウォーズ時代の特殊戦闘員ダイノボット。
アクサロン号画像データバンクより)
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『ダァァ・・・・。
以上で俺の知っているメガトロンの計画は全て記録した。
後は俺自身がやるべきことを果たすまでだ。成るや成らざらんや・・・・。
「こんな言葉を吐く暇があんなら行動に移せ」、「サイバトロンから勝利を奪う作戦を立てろ」、「臆病者が」、こんな言葉を口にした奴は、以前なら様々な侮蔑の言葉を並べ立てただろう。
しかし、期せずしてメガトロンから反逆し、サイバトロンに寝返り、そしてまたメガトロンの下に戻ろうとした。
サイバトロンの奴らは・・・コンボイは口に出すことはないが、他の奴らは俺への不信感を露わにしている。だが、俺はそれだけのことをした。
俺は何をしたかったのか。
サイバトロン帝政に対する不満は、無論あった。
デストロンの築き上げた遺産の上に君臨し、「勝者」のツラをした奴らは、敵だ。
しかし何よりも、デストロンという「敗者」に生まれた「運命」に抗いたかった。
今のデストロンはサイバトロンに頭を押さえ付けられた、俎板の上のシーコン達と同様だ。
トドメも刺されず、「融和と協調」を謳う奴等によって生殺しにされる。
偽善と不正に満ちた「勝者」の支配する世界共々、「敗者」のデストロンを然るべく葬り、シリコンバルハラの英霊の列に加えさせたかった。
ギガトロンと名乗る男は、「忌まわしき永遠から種族を解き放つ」と言っていたが、そんなモノには興味がない。
しかし、メガトロンならば「デストロンの呪われた運命を解き放つ」かもしれないと思い、俺は奴に協力した。
しかし、奴も違った。
メガトロンは全て呑み尽くすまで止まることはない。
俺は矢尽き刃折れようとも、メガトロンの狂気を止めなくてはならない・・・・。』
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ダイノボットの「遺言」によれば、現サイバトロン(オートボット・マクシマル連合)政権は、デストロン帝政を礎として宇宙に覇を唱えた、「盗人猛々しい」存在であり、敵にトドメを刺さないでいる、傲慢偽善の存在に映っていた。
そして、彼から言わせれば、「生殺し」にされているデストロンは、過去の強大な帝国の残滓に過ぎず、生かされた屍、サイバトロンの勝利を飾るトロフィーにしか見えなかった。
彼は何に勝利したかったのか。
欺瞞と屈辱への勝利である。
しかし、その戦いは究極的には勝者はいない。
デストロンの急進派であるデストロンガー総帥ギガトロンの「忌まわしき永遠から種族を解き放つ」という誘いにも乗らなかったダイノボットは、虚無感と怒りに苛まれていたと考えられる。
そして、クライオテックのプランに基づく「メガトロン」の歴史改変計画に彼は賛同し、ゴールデンディスクを盗み出した。
だが、「メガトロン」と結果的に決裂し袂を分かった。
恐らくは、闘いをゲームと認識し、部下達も単なる手駒と見なしていた彼と、「闘いは栄光への道」と考えていたダイノボットとの、見解の相違によるものと思われる。
ダイノボットは、闘いの旅路の果てに、真の誇りを見つけて散っていた。筆者はそう思う。
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おわりに
本論では、「マクシマル・アップグレード」施行後に誕生した新世代の差異、「サイバトロン(マクシマル)」・「デストロン(プレダコン)」について、「ビーストウォーズ」に参戦した、ダイノボットの遍歴から検証して来た。
太古の地球を舞台に始まり、セイバートロン由来の種自体を根本的に改変したこの戦いでは、サイバトロンのプロトフォームが、デストロン兵として目覚めることが散見された。
その要因としては、
(1)プロトフォームを保護する救命ポッドの脆弱性に付け込まれ、プログラムを改変された。
(2)プロトフォームの基本構造が、サイバトロン・デストロン共に相違がないことが挙げられる。
この事象は、基本的には外的要因により引き起こされたものだが、それを可能にしたのは(2)の内的要因であると考える。
このことは、サイバトロン・デストロンの区別が、極めて無意味なものと示す事例と言える。
しかし、本論で取り上げたダイノボットは、この事例には当てはまらず、自らの意思でデストロン・サイバトロンの両勢力を渡り歩いた。
彼をこのような行動に駆り立てたのは何であったのか。
闘いの中に生きた生粋の戦士ダイノボットは、グレートウォー終結後のデストロンが、過去の栄光の残滓に過ぎず、然るべく「弔い」をし、シリコンバルハラに葬送される「遺体」であったと考えていた。
しかし、サイバトロン現政権の融和策は、自らの勝利と栄光を記念するために、デストロンの「遺体」をトロフィーとして飾る屈辱極まる行為と、ダイノボットは見なしていた。
彼は「誇り高き死」と「勝利」という、一見すると背反する願望を抱いていた。
しかし、彼の勝利がデストロン帝政の「死」を、過去の栄光と共に葬り去ること、そのためのサイバトロンからの解放であるならば、両者は根本的に同じである。
彼は「メガトロン」の計画から離反し、サイバトロンに加わった後も、1人のデストロンとして振る舞っていた。
しかし、彼の立場は、常に両軍の「境界」に足場を置き、メガトロンの計画の推移を冷静に分析していた。
加えて、無意識の内に「サイバトロン」「デストロン」の境界の曖昧さを認識していたと思われる。
人類の祖先を守り孤軍奮戦した時、どちらの勢力としてではなく、セイバートロンの戦士として恩讐を乗り超えることが出来たと思われる。
「境界」の彼方にたどり着いたダイノボットは、永きに渡るグレートウォーを、真に終わらせる可能性を持った事例であると、筆者は思いたい。

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[「後日談」その壱 「グリフの手記」]
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私の研究室に、何者かが侵入した。
これで4回目である。
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ダイノボットの論文を報告した際、非難の声が巻き起こった。
出席していたロディマス氏の仲裁がなければ、危ない場面も見られた。
これには、学会内において「ビーストウォーズ」戦役の見解が、まだ定説が出来ていないためである。
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この戦役は、セイバートロンを根底から変えた大変動であった。
しかし、多くの研究者は「メガトロン」からの「セイバートロンの解放」のみに着目し、太古の地球で起きた戦いについては、ほとんど検証が行われていない。
最高議会は、地球での戦闘について厳しい閲覧指定を行っているが、これは再度の歴史改変を防止するという至極真っ当な理由と共に、不都合な事実の隠蔽を行うという目的も含まれていると思われる。
現在、「メガトロン」からセイバートロンを解放した、英雄「コンボイ」の列聖が重要な議題として上がっていると共に、神学者から、「サイバトロン」として選ばれるのは善のスパーク、「デストロン」には悪しきスパークという説が提出され、話題になっている。
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これらの事実は現政権を正当化し、将来の禍根を招くだけの妄言に過ぎない。
この論文は、現在の風潮に逆行するものであり、そのために研究室への侵入といった、嫌がらせが起きていると私は考えていた。
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現在、私は道を歩く度に何者かの追跡を感じる。
しかし、これらの出来事は単なる嫌がらせではない気がする
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[「後日談」その弐 「会話」]
セイバートロン星某所
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「グリフ女史の護衛、ご苦労だった。ラットル工作員。」
「過分のお言葉、光栄でございます・・・・と言うべきなんだろうけど、正直なところ気が引けるよ。
そもそも彼女が狙われたのは、ダイノボットのコアダンプをオイラが渡したせいだよ。
それもこれも、「お偉いさん」からの指令でね。」
「この手段が下策であることは、発案者である私が十分に理解している。
だが、現在水面下で暗躍を続けている勢力については、詳細は殆ど不明だが、偶然にも奴等がダイノボットの情報を欲していることが分かった。
それを君が持っていたのは、まさに僥倖だったよ。
君のことは優秀な教え子であったと、次官から話をうかがっていたからね。」
「バンブルのオッちゃんが、今じゃ情報局の次官とはねぇ。
しかし、このことは「極秘」と言っちゃいるけど、最高議会にはもう筒抜けじゃないの?」
「私は最高議会よりも、情報局長官に知られるのを恐れている。」
「なるほど。
そういえば、オイラ、地球であいつの元ペットをブッ飛ばして来たよ。」
「現在、長官とカセットロン部隊には、接触は見られない。
しかし、彼の「ペット」への愛情は有名だったからな。用心した方が良い。」
「ヤレヤレ、しばらくは面倒事から遠ざかると思ってたけど、オイラはそういう星の下に生まれたんだろうね。
無茶をするのはゴリラの大将だけだと思っていたけど、どうも「コンボイ」と名の付くお人は、みんなそういう性分らしいね。
グレートライオコンボイ閣下殿。」

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